街路樹の診断
2015-08-03


 梅雨が明けたとたんに、うだるような暑い日が続いていますが、この暑さの中福岡市で行われた街路樹の診断のお手伝いに行ってきました。
 場所は福岡市の大博通り、博多駅から港の方に伸びており、周辺はオフィスビルやホテルなどが建ち並ぶ福岡のメインストリートの一つです。
 今回の調査は歩道部に植栽されているケヤキが対象となります。熊本もそうですが、福岡でも街路樹として多く植えられており、尚かつ、これまでに倒木や枝の落下など樹木のまつわる事故の多くを引き起こしている要注意な樹木でもあります。

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 幹の部分を木槌で叩いても、空洞と思われるような音の変化は聞き取れなかったのですが、下の写真でも分かるように株元の部分にはベッコウタケの大きなキノコ(子実体)が発生しています。直径20センチ以上はあるでしょうか。

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 キノコを外してみると、着生していた部分の樹皮が白っぽく変色しているのが分かると思います。試しに先の尖った鉄の棒で突いてみると、その先端が幹の内部に食い込んでいきます。幹の部分はかなり腐朽が進行しているものと思われます。

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 そこで、どの程度腐朽が進行しているかを測定するために、音波の伝わり方の速度によって、腐朽部分を測る特殊な機械を用いました。
 まず、幹の周りに音の伝わる速度を測定する長方形をしたセンサーを12個程取り付けます。センサー直下の幹に金属製の釘状のものを軽く打ち込みます。このセンサーと釘とは線で結ばれています。釘の頭の部分を特殊なハンマーで叩く事によって発生する音が、どのように伝わるかを各々のセンサーで読み取る仕組みになっています。
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 測定結果は専用ソフトを介してパソコン上に画像として表されます。少し見にくいのですが、下の写真の青と紫の部分が腐朽した部分です。緑の部分は腐朽が疑われる部分、茶色は健全な材を表しています。測定の結果、空洞率は47%となり、今後、伐採を検討される値となりました。

 最初の写真では枝葉が茂り、健全に成長している樹木に見えるのですが、株元の方では予想外の腐朽が進んでいます。特にベッコウタケの場合、他のキノコと違って主に根株部分を腐朽させるので、一見健全に見えても樹木自体を支持する根が殆ど腐っており、少しの雨風でいきなり倒木という危険もある訳です。

 今回、使用した機械を上手く活用していけば、倒木などによる事故のリスクを減らす事が出来ると思います。しかし、この機械その特殊性からか非常に高価なもので、当然、診断料もかなり高くならざるを得ません。一路線の街路樹を全て機械による診断という訳にはいかないようです。基本的には我々樹木医が目視によってベッコウタケをいち早く発見し、その成長の度合いによって、このような精密診断を行うのか、伐採をするのかを判断できる技能を身につける事が大切なようです。

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[樹木医の仕事]

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